全関東遊技業組合連合会は11月20日、都留文科大学・早野慎吾教授による依存問題等に関する講演会をリモート形式で開催した。
講演会の冒頭、趙顕洙会長(埼玉県遊協理事長)は、「大阪府が申請していたいわゆるIR計画が今年4月に国土交通大臣から認定されたこともあり、いまだにギャンブル等依存問題がしばしば取り沙汰され、その関連でパチンコ・パチスロに対して、業界の依存問題対策も含めて、まだまだ誤った認識に基づく報道や発言が散見される。こうした状況の中、私どもに欠かせない取組みの一つが『パチンコ・パチスロは安心・安全な遊技である』ということの知見を今一度業界全体で深め、それを自信をもって発信していくこと」と今回の講演会を企画・実施することに至った経緯を説明した。
続いて早野教授が「各種ギャンブル等依存問題とパチンコ業界の対応」とのテーマで講演を行った。この中で早野教授は、「ギャンブル依存問題とパチンコ」「ギャンブルはなくならない:歴史が証明するもの」「射幸心とは何か」「社会学から見た各ギャンブル」「懲りる文化と懲りない人たち」「今後、パチンコ業界が目指すこと」などに大別し、同氏が2020年に実施したインターネットによるギャンブル等依存の大規模調査の結果も引用しながら、社会学的アプローチからギャンブル等依存問題にて解説した。
同氏は、楽しいことには依存問題がつきまとうものだとし、ギャンブルのような娯楽が古来からなくならないのは最も単純かつ強烈に優越感と解放感を満たせるからだと説明。それは人が生きていくうえで重要な要素で、なかでもパチンコの良いところは、競馬、競輪などの公営競技や宝くじと比べて最も低額で優越感と解放感を得られるところにあるとした。同問題においてギャンブルやパチンコのイメージが悪い理由については、政治的プロパガンダや、2013年に久里浜医療センターが実施した厚生労働省調査においてギャンブル依存の疑いがある人は536万人と発表され、それをマスコミが大きく報道した影響を挙げた。しかし、同調査は、すでに回復している人も含めた「生涯」の累積数であるなど疑問点がいくつもあり、そうであるにもかかわらずパチンコ業界が科学的な反論ができなかったことも問題だと指摘した。
その上で同氏は、自身の2020年の調査におけるギャンブル等別SOGS(注:ギャンブル依存のスクリーニングテストにおける国際的な指標。高いほど、ギャンブル依存の疑いが高いとされる)スコアなどを紹介しながら、パチンコが依存問題の元凶であることを示す要素は何一つなかったと断言。参加人数が少ない種目ほど平均SOGSスコアが高くなっていることから、逆に参加者が多い種目ほどニューカマー、その種目を娯楽として純粋に楽しみたい人が多い状況が推測されるとして、パチンコ業界はユーザーの裾野を広げることが重要であり、そのためにも中小ホールが果たすべき役割は大きいとの見方を示した。
また、同氏は、2020年の調査対象者について、その後も毎年追跡調査しており、ギャンブル等依存の疑いがある人の自然回復率は極めて高いことが見てとれると説明。そもそもの日本におけるギャンブル依存者発生率も、他国との比較は調査方法が統一されていないので厳密にはできないものの、国際的に問題ない水準に収まっているとした。
最後にパチンコ業界が今後取り組むべき課題として、①感情論ではなく、ギャンブルに対する正しい知識を身に付けること、➁研究者と連携してギャンブル関連の研究を推進すること、➂業界のイメージの改善に努めること、④政治に関心をもち、信頼できる政治家を応援することの4点を列挙。①については、科学的データに基づかない主張は、必ずそれ以上の反論を受けるとして注意を促した。➂については、一例として、全国の小学校が予算不足で施設の手直しや教育用具の充実が図れなくて困っていることから、業界を挙げて小学校の支援に力を入れると、長期的な効果が期待できると提言した。
講演後、趙会長は「私たちは、日頃のホール営業の中で、各店にぱちんこ依存問題相談機関リカバリーサポート・ネットワーク(以下、RSN)のポスターを掲示したり、安心パチンコ・パチスロアドバイザーを配置するなどの依存問題対策に努めているが、お客様から『RSNに電話しました』などと打ち明けられることはほとんどなく、依存問題を抱える人たちの実像がなかなか掴めないのが実状。私たちは、依存問題について感覚的な話に終始してしまいがちだが、エビデンスに基づいて話ができるよう日頃から意識していかなければならない。依存問題対策の面からも、ホールは顧客本位の営業に努め、『安心・安全なホールづくり』をどれだけ実現できるかを問われているのだとも痛感した」と総括した。
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