創刊60周年記念にあたり、業界の歴史を振り返る意味において「パチンコ産業の歴史シリーズ」を再掲載しています。 ※この原稿は2011年6月号に掲載していた「パチンコ産業の歴史⑬」を一部加筆・修正したものです。
1. CR機の普及と2回ループ
「社会的不適合機」の撤去により、CR機の導入は急加速した。何しろ市場には「確変なしの完全ノーマル機」と、「確変図柄なら以後2回当たるまで確変の2回ループ機」しかない。連チャン機に慣れたファンが納得する射幸性となると、おのずとCR機導入に踏み切るしかなかった。しかし「CR黄門ちゃま2」「CRバトルヒーローV」などに代表されるCR2回ループ機は、想像以上に大ヒットした。元々から「CR2回ループ機の方が、撤去した社会的不適合機より射幸性が高い」とまで言われていたこれらの機種の極めて高い連チャン性にファンは魅せられた。また液晶化が進み「スーパーリーチが多様化」したことにより、演出面でも完成度が高まっていった。
ここで当時の「2回ループ機」の主要スペックを振り返ってみたい。確変突入率は3分の1、 大当たり確率は400分の1前後。当たれば全大当たりが「16R・10カウント・15個賞球」で2,400個が払い出される。確変で当たれば、あと2回大当たりするまで確変が継続。つまり2回連続で通常図柄を引いてしまうまでは、確変が終わらない仕組みだ。計算上の確変継続率は55.6%と一見低めに見えるが、実際には、確変図柄で当たった場合は「最悪でも3回分の大当たりが確約」されているため、確変大当たり時の平均大当たり回数は5.25回となり、獲得玉数は12,600個にのぼる。
現在(2023年4月)の日工組内規では、右打ち時の最大期待出玉は6,400個、右打ち初回大当たりを最も有利な状態とカウントしない場合でも、最大で7,900個に総量規制されている。さらには「スマパチ」に搭載されている「Cタイムの引戻し」まで考慮しても、そこでの引き戻しは20%以内に規制されているため、これを含めても9,875個。仮にヘソでの初当たりが1,500個だとしても最大値は11,375個となり、当時の2回ループ機には及ばない。
ただし当時の市場は「40個交換」が中心であった点には考慮する必要があるだろう。しかも無制限ではなくラッキーナンバー制が主流であり、確変中以外は出玉交換が基本だった。例えば「3・7ラッキー/4・9交換」であれば、3と7の大当たり以外は全て出玉を交換し、現金投資となる。仮に3か7で大当たりした場合は、4か9で大当たりするまで持ち玉で遊技可能、といったルールだ。もし今、当時の2回ループ機が再現されたとしても、等価か高価交換が主流の現在では甘すぎて使えない状況であるのは確実だ。また「40個交換の12,600個」よりも「高価交換の11,375個」の方が射幸性がUPしているのも明白だろう。時代による物価上昇は考慮する必要があるが、現状の射幸性が当時より著しく低下しているものではないこともまた確かだろう。
ただし、いずれにしても当時この「2回ループ機」は市場から圧倒的に支持された。大当たり確率が400分の1という低い確率ではあっても、全ての大当たりで2,400個の出玉を獲得できる。さらにはヘソ賞球も5個で玉持ちも良かったが、それでも40個交換の市場では充分に回せて利益確保もできた。ファンも「確変で当たれば最低7,000個、平均で12,000個」という出玉感と、「確変でなくても2,400個は出る」という安心感により投資意欲が湧いた。一方で、当時としても「12,600個」という射幸性に関しては問題視する声も聞かれた。ただし時代は、行政と業界団体が一体となって「CR導入によるインのクリア化」を推進している真っ最中。ある程度のCR導入シェア率を達成するまでの期間は、この「CR機の射幸性」問題が表面化することはなかった。
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