【寄稿】7月情勢など(WEB版)/POKKA吉田

7月以降の新規納品設置となる「スマパチ」は、性能規制が緩和されていることはもはやみなさんご存じだろう。LT性能、総量計算方法、Cタイムと3種類の緩和が実施されており、テスト導入を除いて7月8日から導入されたe花の慶次〜傾奇一転がLT性能緩和の一号機となった。ところが慶次の結果は本稿執筆時点で既に出てしまっており、LT性能緩和機初の成功事例とはならなかった。8月はe北斗の拳10とeフィーバー機動戦士ガンダムユニコーン 再来-白き一角獣と黒き獅子-が導入されるが、両機種ともに緩和対応機ではなく従来基準の性能で登場する。もっとも、夏商戦のスマパチの中で最もホールの期待を集めているのは北斗となっており、本誌が発行される頃にはある程度結果が見えているかと思う。昨年のスマスロ北斗の拳と同様に工場からの出荷式の模様をプレスリリースしてシリーズ最高傑作を謳う自信のあらわれであり、同様にCMにかまいたちを起用し、さらに昨年以上の販促を展開するという。スマパチ性能緩和対応機は9月以降に導入機種が続々と登場する。それまではホールの期待No.1の北斗に注目しておきたいと思っている。

7月は少しずつ専用賞品導入店が増えてきている印象がある。5月20日付「パチンコ・パチスロ店営業における賞品の提供方法に関するガイドライン」に対応してぱちんこ島とパチスロ島とで異なる専用賞品を提供することで、それぞれ異なる営業分岐割数での営業を可能とするものだ。早くも6月に導入する店舗が登場し、それが7月に入って少しずつ増えている。

私の知る範囲では、たとえばシール貼付などの雑で安直な「専用賞品作り」で対応したというケースはない。このため、問屋はホールからのニーズを受けても一から準備する必要があるので、対応に時間を要するという状況になっているところが多いようだ。ただし、すぐに準備対応可能というところもないことはなく、対応できるところから導入が始まっているというのが7月の状況だと思う。ホールにおける専用賞品需要は決して小さいわけではないため、あくまでも問屋ごとの対応ということになるというのが一般論にはなるが、営業分岐割数については県ごとで遊協組合の申し合わせや賞品の提供個枚数範囲(等価交換と解せる範囲)が決まっているところも多いので、すべての地域で問屋が対応さえすれば実施可能というような状況とも言い切れない。地域ごとに問屋ごとに、さまざまな調整等も加味しながら、個々の店舗、個々の法人ごとに検討して対応すればいいということになるわけであり、今後も専用賞品導入店舗の増加状況には関心を持っておきたい。

7月までに専用賞品を導入した店舗が必ずしも「ぱちんこ島の分岐割数を引き上げているわけではない」という点も私が気になっているところだ。2011年の一物一価指導(及び二物二価系営業ヤメレの指導)以降、全国的に10割分岐にシフトしていきぱちんこ市場が低迷、パチスロ市場でかろうじて、という市場感になっていった。雑に言えばそれまでは12割分岐のぱちんこ島、10割分岐のパチスロ島があって、一物一価指導後は、より活況感のあったパチスロ島にぱちんこ島の分岐割数を合わせていってぱちんこ島が辛くなる、という流れである。今に続く極低スタート営業のきっかけとも言え、二物二価系営業実現の最大の目標地点が「ぱちんこ島の分岐割数を引き上げ、パチスロ島をなんなら10割に」ということになっていたのが業界の不文律的であった。

ところが一物一価指導から10数年が経過し規則改正もあってぱちんこ遊技機も回胴式遊技機も性能規制(技術上の規格)がガラっと変わった。ぱちんこの低スタート化とともにへそ1個賞球による「必ずしも釘調整を伴わない低スタート・低ベース」営業がトレンドになって久しい上、昨今のぱちんこの人気機種(まどマギ3などのLT機、Re:ゼロseason2など)に対しての低スタート上等のような客の遊技スタイルなど、ぱちんこ島の分岐割数を引き上げるというのが遊技客のニーズなのかどうかも再考する必要があるように感じている。一物一価指導後、全国的にも脱等価(=脱10割分岐)営業が主流になっていることから、今の遊技機性能における理想的なぱちんこ島・パチスロ島の分岐割数はどこにあるのか、ホールのニーズに対して問屋の対応も遅れているのだから熟考する時間はある。特にぱちんこについては第二四半期(7-9期)にスマパチ性能規制緩和対応機によってスマパチ普及が進むことが見込まれていることから、市場の遊技機性能が変容するのならなおさらである。正解がどこにあるのかはわからないが、遊技機性能動向、遊技機市場動向などに注目しておきたい。

市場動向で言えば7月11日のDK-SIS白書2024年版-2023年データ-の刊行記者発表会は重要だ。DK-SISは今もなお業界のマスデータの中でもっとも母数が大きいものであり、かつ、ホールの営業データの直接の集積によるものであるから精確。いっちゃ悪いがレジャー白書の絶対値(人数や額などの「数値」)を参照するくらいならDK-SISを参照するのが業界関係者のたしなみだと思っている。

ざっと触れるとすれば、2023年は粗利益が大きく回復しているという点から、昨年がいかにぱちんこ業界において業績反転攻勢の一年間だったかがよくわかる。昨年はガイア民事再生のニュースが流れて「ぱちんこ業界大不況説」を唱える頭の悪い者が急にYouTube上で湧き出したが、こんな業界のことを知らない素人はともかく我々がこの視点で同じように頭が悪いことはあってはならないので、ここはしっかり参照しておきたい。

一方で2023年は4円島のアウトが過去最低を更新している。2020年くらいから遊技機市場はぱちんこ島の収益性がパチスロ島の収益性を逆転していたのだが、2023年はまあまあの痛恨事である。これは要するに「ぱちんこ島(4円島)を抜きすぎている」だけだ。だが、「抜きすぎないようにすることができない」からこそ「過去最低のアウト」なのである。今年もぱちんこ市場は凋落トレンドから始まっていると評価している。そこに風穴を明けたのが北斗強敵やアリアなどのLT機であり、本稿執筆時点ではまどマギ3やアズールレーン、貞子などが市場を牽引しており、そしてe北斗やeユニコーンが導入されていくことになっている。過去最低のアウトの2023年から今年回復できるかどうか、8月商戦のぱちんこ市場はかなり重要であり、9月以降のスマパチ性能緩和対応機もそれ以上に重要になるだろう。どこかで「抜きすぎない営業でやっていける」環境を作らないと、DK-SIS白書などでダイコク電機がずっと警鐘を鳴らしてきたが「抜きすぎて市場がさらに悪くなる」のは当たり前の話だ。ぱちんこ市場の踏ん張りどころはまさに今である。

7月はパリオリンピックが始まった。また、日本全国が猛暑や豪雨被害に苦しんだ一ヶ月であった。全日遊連は酷暑避難ポスターという初の試みを始めた。これからのホールはトイレ、喫煙所、貸傘、などだけではなく夏の猛暑時の涼しい憩いの場としても機能していくことになる。

とまれ、まずはe北斗の状況に注目しておきたいと思う。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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