なにやらいろんなことがたくさんあったのが6月だったと思う。
まず驚いたのが6月11日の日遊協総会。例年、警察庁としての業界所管の所信表明のような意味合いを持つ保安課長が講話するのが1月の全日遊連理事会と6月の日遊協総会。これに11月の余暇進秋季セミナーの課長補佐講話も合わせて、年3回の行政講話は業界関係者にとってはとても重要なもの。重要なものだからこれらの講話はテキスト化(近年ではPDF化)されて業界全体に配布されてきた。文言のチェックを警察庁が進んでやって赤入れすることもあるくらいの重要度である。そして驚いたとした今年の日遊協総会。松下保安課長の講話が信じられないくらいに短かったのだ。
過ぎてみればその後課長人事だったので、異動前のことという異例もあり、また、今年は初めてパチンコ・パチスロ産業合同祝賀会という全体行事が追加されたこともある。そういう意味では今となっては不思議ではないが、異動のことを知らない6月11日当時、何かしら、良い意味か悪い意味かは知らないが、異変が起こっているのではないかと考える人は多かった。
6月よりさらに時を戻すと5月20日の賞品のガイドライン。これに対応した専用賞品提供店が6月には登場し、6月から7月にかけて専用賞品提供店が僅かではあるがさらに増えている。基本的には東京のような地域統一スキーム&同一賞品のところの対応例はまだなくて、問屋によっては対応できるという、問屋ごとの対応になっている。ホール側の需要は私の想定よりは低く、しかしある程度は旺盛なので問屋が専用賞品を準備できればそれなりに取り扱い店舗は増える計算だ。ただし、いくつかの問屋に聞いてみたが、専用賞品の用意に時間を要するらしい。現状、すぐに対応できていた問屋は、元々新賞品を用意していたのかなんなのかは知らないが、すぐに対応できた問屋はかなり少ないようである。
そして6月24日。この日は全日遊連の総会の日であり、同じホテルの同じフロアの別会場でパチンコ・パチスロ産業合同祝賀会が開催された。例年の賀詞交歓会よりも大規模に見えた合同祝賀会。一応はパチンコ・パチスロ産業21世紀会の13団体の共催という体裁になっているが、とにかく大規模。遊技産業議連の国会議員の出席が58人であり、そのうち11人が代理出席。つまり47人の国会議員は本人が出席した。また、58人という数は自民党で唯一残っている麻生派と変わらない数である。
合同祝賀会のメイン行事はパーパスの発表であった。全日遊連千原副理事長がまず説明し、続いて詳細をマルハン東日本カンパニー西氏がプレゼンした。業界のパーパスは「遊びの力で心を元気に」というもの。かなり抽象的な言及に留まった印象はあるが、このパーパスを軸に業界全体が進むべき道、未来を構築していくことになる。何より、このパーパス発表は代理出席を含む58人の遊技産業議連の国会議員とこの日に保安課長となった永山貴大氏も千原氏と西氏の説明を直接聴いているのである。
もとは目標などの意味を持ち、現在は転じて企業経営における存在意義とか志とかと解される「パーパス」であるが、パーパス経営なるものがアメリカや日本で重要視されるようになってからはまだ日が浅い。このためパーパス経営の是非なども実は議論の余地もあるしパーパス経営を進めていく手法にもいろんなものがありそうだ。何より企業経営のためのものが業界全体で、というのが6月24日のこと。凋落傾向にあるとはいえまだまだ巨大な産業であるぱちんこ業界全体のパーパスというものは、果たして前例があるのかどうか。産業全体がパーパスを掲げるというのはおそらくは初めてのことであり、その宣言を6月24日に、業界は58人の国会議員とこの日保安課長になった永山課長にしたということになる。
パーパス経営の一般的な手法に照らせばビジョン、ミッション、バリューの絞り込みは必須。マルハン東日本カンパニー西氏の説明に照らせばビジョンとバリューということになるが、これらの詳細というか肉付けは今後の議論ということになっている。業界全体がパーパスに基づいた行動を実施できるかどうかはパーパスよりもこの肉付けにかかっているだろう。
そもそも「遊びの力で心を元気に」というパーパスは、私に言わせれば「娯楽」というものに対する一般的な評価である。特に戦後間もない日本において、流行歌、映画、相撲、プロレス、プロ野球、麻雀などとともにぱちんこも娯楽として多くの日本人を楽しませてきた。こういった娯楽は興じるときの一喜一憂が嫌なことを忘れさせてくれるし、ストレス解消になればまた明日から頑張ることができる、などの効用がある。それをわざわざ説明することなく「娯楽」と称してきたのが日本人だ。今回のパーパスは戦後日本における娯楽の一般的な評価を換言したものに過ぎない。つまりこのパーパスは「当たり前」のことを言っている。
だからこそ、今後の肉付けがとても重要になる。そしてこの肉付けは難産が予想される。果たしてそれはどこから始めるのか。21世紀会全体でやれるのか、それともどこかの職域に限定してやれるのか(ホール4団体や全機連など)、あるいは個々の団体内でやれるのか。実はそれすらなくても個々の法人ごとに検討していくべきものなのか。
私は合同祝賀会に取材として行ってきたので、この日の熱量は充分感じたつもりである。しかも乾杯までの予定がスタートから1時間の予定であり、この手の大規模催事ではとても珍しいことだがほとんど時間通りに進行していった。乾杯の発声は日遊協西村会長が担ったが、その直後に時間を確認して数分しかズレがなかったことに気が付いた。こういった細部がきっちりしている催事は良いものと相場が決まっている。熱量の高さと細部の丁寧さとを合わせて58人の国会議員、新保安課長と何百人いたかわからない業界関係者らで共有したメインイベントが「遊びの力で心を元気に」であった。
だから今後、業界関係者のたしなみとして、このパーパスの肉付けを考えたり議論したりすることを提言しておきたい。パーパス実現のために、たとえば遊技機性能規制はこうした方がより心を元気にできるとか、風営法上のホールに対する営業規制はこうあるべきだろう、とか、そういうことを考えていくことが何よりも重要だろう。
そして7月。今年の7月以降に新規納品設置されるぱちんこは、スマパチに限定して性能規制が緩和された。LT、新総量計算、Cタイムが既出であるが日工組はさらに性能規制について警察庁に要望を出している。日電協ももちろんであり、遊技機性能規制はまだまだ緩和のトレンドだ。この点、新課長の手腕と判断が実際にはどうなるかも注目であるが、6月の出来事、7月以降の新しい基準のスマパチの動向に注目しておきたいと思う。
■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。
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