【寄稿】激動の一ヶ月(WEB版)/POKKA吉田

10月27日投開票の衆議院議員総選挙は自公+維が惨敗した。しかし立憲も自民党に代わる第一党にはなれず。

国民民主の玉木代表の首班指名の方針が早々に明らかになって自公は首の皮一枚つながる的安堵感、立憲は党内の反国民民主勢力を放置したツケなのか玉木代表を翻意させて野田代表に投票させることに失敗。解散総選挙後に必ず招集される特別会が11日に決まり、当日は衆議院での首班指名が決選投票になると見られていた。

キャスティングボートを握った国民民主玉木代表の動向に日本中が注目した11日の朝に、まさかの玉木代表の下半身スキャンダルが報じられ、本人も事実を認める異例の事態に。国民民主の主張する政策に反発する財務省や国民民主主導の法案協議に陥ることが確定している石破政権にとっては、変な意味で溜飲を下げることになったようだが玉木代表は辞任せず首班指名の方針も変更せず。

首班指名は予定通り石破茂vs野田佳彦の決選投票となり、結果は石破茂勝利。特別会招集のために先に内閣総辞職していた石破前首相が第103代首相に決まった。

石破茂票は一回目の投票も決選投票も221票であり、総選挙の自公の公認候補215議席に加えて無所属6人が自民会派入りしており、きっちり自公票だけだ。立憲は一回目の投票で151票、決選投票で160票と伸び悩み。決選投票では84票の無効票が出ている。石破とも野田とも投票しないと見られている維新と国民民主を足しても66票なので、さらに18票が野田と投票していないことになる。つまり野党第一党である立憲が野党を束ねられていないことも露呈した。

第一次石破内閣は発足直後に衆議院を解散したので何もやっていないに等しい。事実上石破首相の初仕事となる第二次石破内閣は11日中に発足。総選挙で落選した牧原前法相の後任に鈴木馨祐衆院議員を、小里前農水相の後任に江藤拓元農水相を充てた。また、石井前代表の落選による辞任で公明党の代表に就任した斉藤前国交相の後任に公明党の中野洋昌衆院議員を充てた。他の閣僚はすべて再任となっている。

現在、衆議院は自公勢力で221議席となっており過半数の233議席には届かない。このため衆議院ではすべての法案が可決されるためには、必ず野党の一定の賛成が必要となる。政党まるごとの数で言えば、維新と国民民主はそれぞれ単独で閣法(政府提出法案)に賛成すれば過半数になる。議席減特に比例票の大幅減の責任を党内で追求された維新馬場代表は、その経緯からキャスティングボートを握るのに失敗。国民民主玉木代表は維新よりも10議席少ない上、まさかの下半身スキャンダルが出てもキャスティングボートを握り続ける形となった。

これはかなり石破政権にとっては厳しい政権運営となる。なにせ「全ての法案について、最低でも維新or国民民主が賛成しないと絶対に成立しない」のだ。補正予算、来年度予算などの「予算」も法案である。石破政権は特に維新と国民民主の意見を最大限取り上げて、彼らに妥協を迫り政権としてやりたいことを実施するということしかできなくなっている。また、自公勢力が過半数を割っていることから、何かの拍子に衆議院に内閣不信任案が提出されると可決される可能性もある。内閣不信任案が可決されると10日以内に衆議院解散か内閣総辞職か、いずれかをしなければならないのが日本国憲法の規定だ。議席の数から言うと野党単独で内閣不信任案を提出することができるのは立憲だけ。以上のことから、石破政権は維新と国民民主の意見だけを聴くのではなく野党第一党の立憲にも最大限の配慮をしなければならなくなっている。

総選挙を急いだのは石破首相の判断であることは間違いないが、自民党は総選挙前の議席から今回、56議席も減らす大惨敗となった。うち6議席は無所属ながら自民会派入りしたとはいえ50議席も減っている大惨敗である。石破首相は政策実現・法案成立のために野党各党の意見をしっかり聴かなければならないが、自民党内に既に石破おろしの萌芽は始まりつつある。総裁選の論戦では「議論をしっかりしてから解散」ということを主張していたのに首相就任前から早期解散に言及。10月1日に石破内閣が発足して9日に解散したが、首相就任から8日後に解散というのは戦後最短だ。議論をするというのはウソだったと野党が大反発していたのもうなずける。それでも総選挙で勝てば問題なかったが、50人の同志代議士を自民党は失った。石破おろしが出てこなければオカシイということで、石破首相は党内にも敵がたくさんいる状態になっていく可能性がある。

一方、世界で最も日本に影響する国、アメリカ。11月5日に大統領選挙と連邦議会選挙(上院下院両方)が実施された。日本の主要マスコミや自称ジャーナリストらはなぜかカマラ・ハリス優勢を語り続けていた。しかし蓋を開けてみればドナルド・トランプが圧勝。しかも激戦州とされた7州(ネバダ、アリゾナ、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ジョージア)すべてでトランプが勝っている。日本のマスコミは既に米国の情勢分析に適さないレベルに墜ちたと言えるかもしれない。

トランプが率いる共和党は既に上院で過半数を獲得することが確定的。本稿執筆時点では激戦となっている下院の結果がまだ不明だが、共和党が伸張しているというアメリカの報道もある。共和党のシンボルカラーである赤を指して「トリプルレッド(大統領、上院過半数、下院過半数すべて共和党)」の実現が現実味を帯びているという。民主党にとってはせめて下院だけでもという最後の砦だが、情勢はトリプルレッドの公算である。

近いうちに石破・トランプ会談が実施されると思われるが、トランプ次期米大統領は石破首相をどう評価するのだろうか。石破首相はアジア版NATO構想や日米地位協定改定論者なのだがトランプがそれを許すのかどうか。日本経済はもちろん外交安全保障など、米大統領と米連邦議会は極めて影響が大きいことから、世の中にどこまでの影響が出るかは現時点では未定だ。

なお、初めて大統領選にトランプが勝利した2016年11月には安倍首相(当時)が急ぎ訪米し、トランプタワーで会談した。ここでサンズ推しも含めた日本版IR実現を要請され、同年12月に強引な国会運営でIR推進法が成立し、政府が依存対策を重要課題に設定した。そのため翌2017年6月19日に警察庁が規則改正案を業界6団体に配布し、風営法議連の活動再開を経て今に至る。つまり、前回、トランプは大統領になる前から日本にものすごく影響を与え、しかもぱちんこ業界にとっては甚大な影響を与えたのだ。今回、第47代アメリカ合衆国大統領としてトランプが日本にどんな影響を与えるか。世界にどのような影響をもたらすか。

みなさんもこういうニュースに関心を持ってほしい。来年は参院選があるが、参院選のときだけあるいは先の総選挙のときだけ、ではなく、たとえば米大統領が6号機初期の苦しい状況のきっかけになっていた、などのことを振り返ると「日常の政治ニュース、日常の国際ニュースが、直接店の営業に影響することもある」ことがわかるはずだ。

この1ヶ月はそういう視点で言えばまさに激動の一ヶ月であった。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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