新年度が始まって1ヶ月でゴールデンウィーク。今年のゴールデンウィークはコロナ禍明けとしては理屈では初めての商戦ということになる。昨年のゴールデンウィーク商戦は一応は5類への移行直前だったので禍明けとは言いづらいものであったが、事実上は昨年から通常の大型連休商戦である。今年がコロナ禍明け後初なのか昨年が初だったのかはともかく、今年のゴールデンウィーク商戦、みなさんの店舗の業績はどうたっただろうか。
4月は警察庁の「令和5年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」という、毎年この時期に発表される報道発表資料がHPに掲載されている。それによると昨年末時点の店舗数は7,083店舗であり、このところ5年間の同じペース(500店舗ほど)の減少となっている。ただし昨年については800店舗ほどの減少となっており、スマート遊技機、特にスマスロ導入の可否で店舗を閉めたところが多かったということは言えそうだ。その意味では、今年の新紙幣への改刷対応で昨年末の前年比と同様に500店舗を超える減少幅になるかどうか、ということが一年後の警察庁の統計発表数値で気になるところである。
昨年度は業績を公表している業界企業のほとんどが前年比増収増益を達成していることは覚えているだろう。上場企業はもちろん、上場していなくとも決算を公表しているホール法人は多いが、それらの大部分が増収増益を実現した。コロナ禍期間中の政府や自治体の行動制限政策が最も一昨年度までの業績悪化要因であり、昨年度の業績良化要因にスマスロがあったことも事実。しかし、基本的には昨年度は後半にぱちんこが息を吹き返しており、SAOからのRe:ゼロで「スマパチでも良い機械は良い」という当たり前のことが共有され、しかも年度終わりにLT機という、新カテゴリが台頭した。大海5や北斗暴凶星、シン・エヴァレイなどのP機でも好調な機種はあったので、低迷を続けていたぱちんこ遊技機市場も少しばかり明るい兆しを見せていたことも大きいだろう。
ただし、決算を公表していない業界企業で言えば、そのほとんどが増収増益だなんて「とてもじゃないが言えない」ということになる。むしろ赤字経営になっている法人も多く、優勝劣敗の度合いがますます極端になっている印象が強い。業界全体がスクラップ&ビルドよろしく、店舗数減でも遊技機設置台数が横這いならまだマシなのだが、遊技機設置台数も毎年減少している。ぱちんこは普通に減少しているが、昨年度ホールの収益の柱となったはずの回胴式遊技機設置台数も1万台ほど減少している。ぱちんこ遊技機は13万台ほどの減少だからそれに比べたらマシとは言えるが、昨年のあの状況でもパチスロ設置台数が減少しているのは残念なことであった。また、パチスロ専門店が168店舗減っての443店舗。これではスクラップ&ビルドではなくて全体で見ればただのスクラップ過剰である。
先程店舗数について新紙幣への改刷を受けて減少幅がどうなるかということを述べたが、昨年度が増収増益だった業界企業であっても今年度は環境が苦しい。設備職域は強材料が多いがそれ以外の職域はどうか。少なくともホール職域は昨年度とは違って設備投資の額がかさむことが確実なので(新紙幣への改刷とスマパチ島拡大)、業績への影響度合いが懸念されるところ。LT機の台頭など遊技機市場の活性化で相殺できればいいのだが、パチスロもまだ設置台数減少トレンドだったことも踏まえるとぱちんこ市場だけではなく、パチスロ市場もさらに活性化が必要である。
3月末から4月の半ばにかけての全日遊連と大都技研との文書による応酬劇は興味深い内容となっていた。みなさんご存じのRe:ゼロseason2の約150万円再販をめぐっての応酬である。私見では「大都技研の(150万円という価格も含めた)再販方法に独禁法などの違法性は見出せないので、全日遊連が抗議をするとしても、その論法をどうするかとても難しい」というものであった。全日遊連としては論法は「使えない機種と使える機種とのバランスでホールは経営をしているので使える機種だけ高額にされると経営破綻を助長する」というものであり、これはこれで一般的な感覚ではあるが、全日遊連が経緯を警察庁に報告しているという点について大都技研が逆に質問で返したところ、「業界全体のまとまりを警察庁は重視しており今回の再販方法はそれを乱す危惧があるから報告した」という返しは想定外であった。
こういった「独禁法違反だから是正してくれ」と「言えない事例」について抗議をどのように展開するのかはとても重要である。「ランドクルーザーが700万円もするのは高すぎるのでもっと安くしろ」と消費者がたとえ言ったとしてもディーラーの値引き幅限界を超えていたら「なら売りません」で終わるのだ。しかし「同じ業界だから自分だけ儲けるなんてズルいぞ」とはさすがに言えないわけであり、「警察庁が業界のまとまりを重視している」という論法を採用したのは上手だったとは思う。なお、法的な根拠の有無での応酬ではないことから、今後どのような顛末になるかは不明。今までの業界レートなら没交渉になりフェードアウトするが果たして。
振り返るとシン・エヴァレイの販売方法について、全日遊連は4月2日にフィールズの販売担当者による不公正販売となるような発言の音声データがあれば提出してほしいという要請を全国の遊協組合に文書で発出している。こちらは公正取引委員会に報告するときの実態調査結果として提出したいということであり、Re:ゼロseason2の件とは違う立ち回り方だ。実際に音声データが集まったかどうか公取委に報告したかどうか報告したとしてどうなったかは不明だが、独禁法に抵触するかしないかという話の場合は、抵触するなら是正を公取委も巻き込んで求めていく、抵触しないのなら販売方法に問題はない、という事実関係の争いとなるわけだ。全日遊連の、大都技研に対する対応とフィールズに対する対応が異なっているのは、事例が違うからだけではなく、法的視点で観ても扱いが違うものだからだろう。
4月はいろんなことがあったが、全日遊連はいつになく遊技機の販売方法について強硬姿勢を見せている。そのフィールズのレイ、大都技研のseason2は、いずれもぱちんこ市場を昨年末から新年にかけて牽引した機種だ。販売方法の是非はともかく、こういう牽引機種がもっとたくさん登場し、牽引してくれる期間がもっと長くなるのが一番良いのは疑いがないので、遊技機市場の活性化に寄与する新機種がもっと登場することを期待しておきたい。なお、ゴールデンウィークが明けたら例年、失速する機種もいくつもある。本誌が発行されているときにここで名前を出した機種らの稼働が低下していないことを願っておきたい。
今年度は特にホール職域にとっては厳しい業界環境である。遊技機市場の活性化で厳しい環境を相殺できるように、各遊技機メーカーには頑張ってもらいたい。
■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。
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