本稿でも複数回にわたって取り上げてきたマカオの娯楽場幸運博彩経営法律制度(通称「カジノ法」)の改正案だが、去る6月21日にマカオ立法会本会議で賛成多数で可決された。その後、22日に公布、23日には施行となり、次期ライセンス入札に向けた下準備が整った。今後の注目は、まもなくスタートするとみられる入札プロセスに移ることになる。
改正の具体的な内容については過去記事を参照いただくとして、要点を端的に表すとすれば、現行の高税率を維持した上、政府による管理・監督が強まったといえよう。コンセッション事業者(ライセンス保有社)は、政府方針へより一層のコミットメントが求められる。近年、マカオ政府は世界的ツーリズム・レジャーセンター化を目指す姿勢を打ち出している。マスを中心としたより幅広い客層を呼び込むことで、これまでの中国人ハイローラー依存から脱却し、安定的で成熟したカジノ都市へ変貌を図りたい意向があるとされ、いわゆるジャンケット事業者に対する規制を強化する一方、中国本土以外からの国際旅客の呼び込みにあたって一部減税を可能とするなど、改正内容も概ねこの目標に沿ったものとみてとれた。
マカオは世界一のカジノ都市(売上ベース)として知られるが、年間売上のピークは2012年で、以降は2019年までアップダウンを繰り返している状況。特徴的な動きとしては、総売上に占めるVIPルームの割合が徐々に下がってきたことだ。マカオのインバウンドとカジノ売上の大半を占めるのは中国本土からの旅客となっており、中国の政策と無関係ではないとされる。2013年は中国の最高指導者が変わったタイミングといえばわかりやすいかもしれない。2020年以降、マカオのカジノ売上は2019年比でおよそ3割程度にまで落ち込んでおり、その主たる要因はゼロコロナ政策によるインバウンド旅客の消失とされる。すでにマカオ以外のカジノを持つ国・地域の多くがウィズコロナ政策に転換し、復調を果たしているのとは対照的だ。
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