マカオは世界最大のカジノ売上を誇る都市としてのみならず、コロナ前にはアジアにおけるカジノ業界の最新トレンド及び人材が一堂に会するハブとしても存在感を示していた。
しかしながらコロナ禍では渡航制限によるインバウンド旅客減でカジノ売上が低迷し、一時的にカジノ売上世界一の座から転落。また、マカオで恒例開催されてきた2つの大型国際カジノ展示会、「G2Eアジア」と「MGSエンターテインメントショー」のリアル開催も中断を余儀なくされた。
マカオでも、ようやく22年末から年初にかけてウィズコロナへの移行が完了。以降は一気に社会の正常化が進み、インバウンド旅客数及びカジノ売上とも順調な回復が続いている。展示会についても7月初旬に「G2Eアジア2023」、11月中旬に「MGSエンターテイメントショー2023」のリアル開催がそれぞれ復活した。
前者はラスベガス発祥の「G2E」のアジア版として、アメリカゲーミング協会及び国際展示会大手リード・エグジビションズの共催で2007年に、後者は地元マカオのゲーミング機器製造業者の業界団体にあたる澳門娯楽設備廠商会(MGEMA)の主催で2013年にそれぞれスタートしたもの。アメリカ勢と地元勢という対比ができるだろう。
実は、7月の「G2Eアジア2023」はカジノマシンメーカーの出展がゼロ、また規模も極めて小さく、中途半端が否めなかった。シンガポールとの分散開催体制となったことが影響した模様。詳しくは以前の本稿(第42回)にまとめており、参照いただきたい。では、今回のMGSはどうだったか、会場取材の経験も踏まえ、レポートしてみたい。
「MGSエンターテイメントショー」のリアル開催は2020年以来のこと。今回、開催場所をコタイ地区の大型IR(統合型リゾート)ギャラクシーマカオに今年オープンしたばかりの新MICE施設「ギャラクシー・インターナショナル・コンベンション・センター(GICC)」へ移したことでも注目された。
今回のエキジビション面積は約3千平米、出展者数はゲーミング関連の機器・用品メーカーをはじめとする35社。また、会場内のステージではアフターコロナ時代におけるゲーミング業界のマス市場シフトやノンゲーミングプロジェクトの展開などをテーマにしたゲーミング企業トップや有識者らによるカンファレンスも数多くプログラムされた。来場者数の集計結果は現時点で未発表だが、初日終了時点の発表では3千人とされ、2日間合計5千人超を見込むとのことだった。
出展者数、会場面積とも数字だけでコロナ前と比較すれば規模はまだまだなのだが、新会場は天井高や間仕切りの妙で、小さいながら非常に密度が濃い印象を感じた。
世界の主要カジノ機器メーカーが揃い踏みし、しっかり造り込んだ大型ブースを展開。会場内のブースでスロットマシンの新製品発表会を行うメーカーもあり、話題を集めた。日系メーカーについても、ゲーミングマシンメーカーのセガサミークリエイションとコナミ、紙幣識別機のJCMグローバル、ゲーム用カード製造のエンゼルプレイングカードなどが出展。日本から参加した出展者、来場者も多くいたようで、会場内では日本語を耳にすることも多く、日本勢の存在は目立つものだったように感じる。
なお、G2EアジアはMGSの直前にプレスリリースを発出し、2024年もマカオでのリアル開催を継続することを明らかにした。開催期間は2024年6月4日から6日までの3日間、会場は例年通りコタイ地区にあるIRヴェネチアンマカオ併設のコタイエキスポホールとし、2023年にマカオで初開催された「アジアンIRエキスポ」を併催するとのこと。同社は2024年の両展の出展者数を100以上、来場者を8千人以上と見込んでいるという。
正直なところ、昨年の国際カジノ展については、MGSが規模やイメージで圧倒的に優勢だった。G2Eアジアはマカオにおける元祖として、プライドをかけて次回のマカオには注力してくることが予想される。2024年はアフターコロナも2年目に突入し、いよいよコロナの言い訳が利かなくなる。2つの展示会が競争しながら、マカオの業界ハブ機能の向上を図ることに期待したい。
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/
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