【コラム】ぱちんこ・パチスロ機の楽曲とジャスラック申請について(前編)

ぱちんこ開発者の独り言65
2015年4月、全日本遊技事業協同組合連合会(以下、全日遊連)における全国理事会にて、楽曲著作権を管理する一般社団法人日本音楽著作権協会(以下、ジャスラック)側が、「楽曲の複製権については遊技機メーカーから使用料を得ているが、遊技機による音楽再生は上映権に該当し、別途使用料の支払いが必要で、ホールが遊技機を設置し楽曲を流している以上、上映権の使用量を支払うことが原則である」と主張した。

それを受けて、ホール代表側である全日遊連は「ホールに設置している遊技機にどのような楽曲が使用されているか判然としない。また遊技機の入れ替えが頻繁に行われている」との理由により個々のホールでの利用実態の把握が困難であることから、日工組、日電協に対して上映等利用に関しても遊技機メーカーで権利処理して欲しい、と要請した。

ここまでが一応、オフィシャルなやり取りであるが、実態はかなりややこしく、ジャスラック側の当初の要請は、ホールに設置されているジャスラックが楽曲著作権を管理する遊技機1台あたりに対して、毎月固定でビックリするような(高い)金額提示をしたところから話はスタートした。

この問題では、稼働差における費用ではなく月額固定金額に対する矛盾点や、ジャスラック管理に該当する遊技機の実態把握、支払い金について個別ホール徴収における手間など、様々な悩める要素のほか、一部、上映権料徴収に反発するホールもあり全日遊連側としても決して一枚岩では無かった。

また、ジャスラック側としても、上映権料徴収が不可能になるよりも、落としどころとして、既に複製権料等を支払っている遊技機メーカー側に上映権使用料も含めて支払ってもらうことが、平等に徴収できる手段であり、個別ホールから徴収する必要もなく上映権料を取り損ねることも無いため、全日遊連側、ジャスラック側双方の落とし所を探るため、対交渉を遊技機メーカー側とジャスラック側で行うことで、問題の解決を図ろうとした。

これにより、全日遊連から依頼をうけた日工組及び日電協が、ジャスラック側と協議を進め、遊技機の上映権における使用料に関して、2017年1月10日、下記のように合意した。

ぱちんこ、パチスロ店において遊技機を用いてジャスラックが管理する著作権を上映、演奏により利用する場合、遊技機1台を単位とし、著作物1曲あたりの80円の使用料が必要となる。
但し、新規管理に伴う経過措置として3年間は以下のとおりとする。

・2017年 利用申し込みの場合 1台あたり50円
・2018年 利用申し込みの場合 1台あたり60円
・2019年 利用申し込みの場合 1台あたり70円

ここでのポイントは、該当遊技機の販売時期や設置時期ではなく、遊技機メーカーからの利用申し込み時期により金額が設定されることである。例えば、販売設置時期が2018年や2019年であったとしても、ジャスラックに2017年に利用申し込みした場合は、該当遊技機の設置が2019年開始であったとしても、1曲1台あたり50円となるのだ。但し、仕様変更等において搭載楽曲に不一致が出た場合は、再度、申請しなおす必要があり、金額は当然、再度申し込んだ時期が基準となる。

例えば、先日発売された「CRぱちんこAKB48-3 誇りの丘」は、実装されている楽曲は54曲と言われているが、この場合、上映権における使用料は

54曲 × 50円(※2017年申請の場合) = 2,700円 と計算できる。

当然のことながら、これは上映権料だけの金額であり、これ以外に出版における複製使用料と、原盤における複製使用料を支払わなければならない。これらの詳細については、次回コラムで説明したいと思う。

■プロフィール
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。

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