皆様、新年明けましておめでとうございます。昨年はホール営業における各種のガイドラインが次々と策定され、遊技機においても技術上の解釈基準が改定、合わせて日工組や日電協内規も改正されるなど遊技業界においては大きな変革の一年となった。そこで毎年恒例ではあるが、今回は昨年の主な出来事の中から10大ニュースとしてピックアップし、それらの経過や現状を踏まえた上で総括してみたい。
【行政関連ニュース】
■技術上の規格解釈基準が改正
昨年8月23日、警察庁は「技術上の規格解釈基準について(通知)」を改正し発出、同日より施行すると通知した。これは2020年1月6日の改正、2022年3月30日の改正に続くもので、2020年には「b時短(遊タイム)」や「c時短(突然時短)」の搭載に加え、リミッター回数を2通りまで設けることも可能に。2022年にはスマパチにおいて「Cタイム」搭載が可能となり、遊タイムの発動回数が確率分母の1.5倍まで緩和、加えてぱちんこ差玉95,000発・パチスロ差枚数19,000枚で発動する「コンプリート機能」が搭載された。
今回の解釈基準改正において大きなポイントは3点ある。1つめは、ぱちんこにおいて「設定ごとに確変性能やラウンド振り分けを変更」することが可能となった点。2つめはパチスロにおいて「ボーナストリガー(BT)」機能を搭載することが可能となった。3つめはぱちんこ・パチスロ共通で「Bluetooth接続で遊技機の音声をイヤホンで聞く」ことが実現可能となったことだ。
これらの遊技機は、新たな技術上の規格解釈基準を基に日工組や日電協で内規が制定され、早ければ今年夏ごろ、遅くとも今年中にはホールへ登場する運びとなりそうだ。2025年は、この新たな遊技機の誕生に期待したい。
【組合関連ニュース】
■日工組内規改正、「ラッキートリガー」搭載機が登場
一昨年6月に日工組内規が改正され、その内容について一部が明らかとなっていた「ラッキートリガー(LT)」を搭載したぱちんこ遊技機が、ついにホールへお目見えした。これは従来まで払い出し期待出玉上限が6,400発だったものを、一定条件下においては一部6,400発を超えて9,600発未満まで期待できる状態の搭載を可能としたもので、初登場となった昨年3月4日の開店の機種はサミー「P北斗の拳 強敵 LT」、大一商会「P世紀末・天才バカボン~福神SPEC~」、コナミアミューズメント「ぱちんこGⅠ優駿倶楽部2ラッキートリガーver」、豊丸産業『Pこの素晴らしい世界に祝福を!199LT「このラッキートリガーに祝福を!」』、藤商事「P緋弾のアリア~緋緋神降臨~ラッキートリガーVer.」、サンセイアールアンドディ「PLT OVERLORD魔導王光臨」、ニューギン「P真・座頭市物語」の計7機種だった。以降もLT搭載機は続々と発売され、甘デジではサミー「P北斗の拳 強敵 LT」、ライトミドルでは京楽産業.「P魔法少女まどか☆マギカ3」、実質MAXとしては藤商事「P緋弾のアリア~緋緋神降臨~ラッキートリガーVer.」など、長期稼働を誇る人気機種も多く登場した。
昨年1月には新たにLTの緩和策を加え内規をさらに改正。昨年7月1日以降に設置・開店する遊技機については「スマパチ×LT2.0」として、スマパチにおいてはLT到達率の計算方法について1/2だった部分を2/3へ緩和、Cタイムにおいても引戻し上限が20%から条件をクリアすれば50%まで引き上げることが可能となった。こちらもLT2.0ではニューギン「e花の慶次~傾奇一転」を皮切りに続々と登場し、京楽産業.「e仮面ライダー電王」などが支持を得た。Cタイム緩和機もニューギン「eキョンシー」が登場している。
なおLT機をはじめこれら内規の計算方法については、この原稿執筆時点の2024年末の時点において既に新たなステージへ向けた議論も始まっているやに聞く。今年のぱちんこ遊技機には大いに期待したい。
■日工組と日電協が「ボーナストリガー(BT)」に関する記者会見を開催
日工組と日電協は昨年8月26日、「新しい遊技性のパチスロ」に関する記者発表会を開催。8月23日付けで改正された解釈基準により、ノーマルタイプの遊技性を一歩進めた「ボーナストリガー(BT)」の搭載が可能となったことを公表した。これはAT機とノーマルタイプの二極化の解消を目的にしたもので、具体的には規定数(3枚掛け、2枚掛けなどの遊技枚数)を固定することにより、規定数ごとにあらかじめ定めておいた確率でボーナスを抽選することで抽選確率の変動を実現するもの。規定数固定の状態はボーナスを契機に移行し、ボーナス図柄により決定される。なお、この「BT」を搭載した場合は「AT機能」や「RT機能」を搭載することはできない。
この機能により、Aタイプにおいては例えば「赤7BB終了後は2枚掛け高確率状態」へ移行させるなど今までにない波をつくることが可能となるだけでなく、仕様によっては例えばBBを2回ワンセットとすることで、事実上「BB1回で350枚獲得」などのAタイプパチスロの開発が可能となる。この「BT」搭載機の登場を心待ちしたい。
■各種ガイドラインが続々と策定
昨年2月29日、「広告宣伝ガイドライン(第2版)」がホール4団体名(全日遊連・日遊協・MIRAI・余暇進)で全国へ発出。これは2022年12月23日に警察庁が発した「ぱちんこ営業における広告及び宣伝の取扱いについて(通達)」を1月25日にはホームページに公表、これを受けて翌2023年2月9日にホール4団体が制定した「広告宣伝ガイドライン(第1版)」を改定したもの。改定のポイントは「賞品及び総付景品に関する広告宣伝」や「第三者に依頼して実施する取材等に関する広告宣伝」の2つが加わった点だ。なおこの広告宣伝ガイドラインについては、2024年末の時点において既に、第3版についての協議も始まっているやに聞く。
昨年5月20日にはホール4団体は「パチンコ・パチスロ店営業における賞品の提供方法に関するガイドライン」を制定。賞品の多様化と取りそろえの充実に繋がるとして、これまでの「パチンコ・パチスロ共通賞品」だけでなく、遊技機の版権に関連したパチンコ専用賞品、パチスロ専用賞品が提供できるようになった。
さらにホール4団体は昨年9月2日にも「パチンコ・パチスロ営業における貯玉・再プレーシステムに関するガイドライン」を制定、同10月28日にはガイドラインの「Q&A」も発出された。
これだけ続々と各種「ガイドライン」が制定されていく状況はかつて記憶になく、業界団体と行政との協議がいかに順調に進んでいるかという現状を示している一方で、この各種ガイドラインをきちんと遵守していくという業界全体の姿勢が問われているとも言えるだろう。
■業界13団体が産業パーパス「遊びの力で、心を元気に」を発表
パチンコ・パチスロ産業13団体は昨年6月24日に開催したパチンコ・パチスロ産業合同祝賀会にて、産業パーパス「遊びの力で、心を元気に」を披露した。全日遊連の千原行喜副理事長は「パーパスは企業や団体の存在意義や目的を示すもので、それが私達の活動や決定に方向性を与え、一貫性を保つための重要な指針である」と述べたうえで、現在業界は、30万人もの雇用を抱える産業であると同時に、地域経済の活性化、災害時の一時避難所や防犯協定などの全国的な社会貢献・防犯活動を行っているものの、業界外には広く知られていない現状を指摘。「パチンコをしない人も含めた社会全体に対して存在意義を示し、広く国民に遊技産業を理解してもらいたい。『パチンコってあってもいいよね』『パチンコ店が近くにあって良かった』と感じてもらうためには、産業としての揺るぎないパーパスが必要である」と説明した。
【メーカー関連ニュース】
■円谷フィールズHDがソフィアを子会社化
円谷フィールズホールディングスは昨年3月25日、遊技機メーカー「ソフィア」の株式を取得し、子会社化することを発表した。議決権所有割合の51%にあたる18,400株を31億62百万円で取得、同9月18日にはソフィアの残り全ての株式を追加取得し、完全子会社化することも発表した。
ソフィアは、1951年創業の遊技機メーカー。“NISHIJIN(西陣)”ブランドで親しまれ、1990年代のCR機普及を加速させた大ヒット機「CR花満開」をはじめ数々のヒット機を発売、遊技機業界の繁栄に貢献を続けてきたが、2023年3月には西陣の事業を終了し廃業。製品修理メンテナンスはソフィアが、補給部品等はエース電研が行っていた。ソフィアは、パチンコホール向けの島設備(補給装置・設備機器)の設置・施工を主要業務に長年トップシェアを有しているエース電研、プラスチック成型及び組み立てを担うアサヒ、電子部品・機器製造のエス・イー・エルの子会社3社を有している。
【ホール関連ニュース】
■能登半島 防災
昨年1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登半島で最大震度7の揺れを観測する地震が発生。建物倒壊や津波被害などで死者は240人以上となった。全日遊連によると組合員の被災状況は石川8店舗、新潟41店舗、富山18店の計67店舗であると確認。ただし石川では未だ全容が把握できていない部分もあり、被災店舗は今後も増える可能性があるとしていた。
業界では各業界団体をはじめ、個別にも遊技機メーカー・ホールなどが相次いで能登半島地震への災害義援金を寄付。ボランティア活動や物資などの支援も多数行った。災害時におけるホールの防災拠点化や防災備蓄提供などにおいても、駐車場や物資、電力などの提供について各組合や個別ホールと自治体との協定が大きく進んだ。
一方で能登半島地震「なりわい再建支援補助金」については、ゲームセンターや一部飲食店は補助対象なのに対し、パチンコ店は補助対象外となっており、関係省庁に対して遊技産業議員連盟と全日遊連の連名で要望書を出す方針だとしていた。
■新紙幣が発行
日本銀行は昨年7月3日、新紙幣を発行した。改刷は2004年以来20年ぶりで、1万円札は渋沢栄一、5千円札は津田梅子、千円札は北里柴三郎の肖像となった。
全国のホールでは、スマパチ・スマスロの専用ユニット導入に合わせて新紙幣発行も加わったことで一時、工事需要が急増し、業界関連の各設備メーカーも対応に追われた。券売機1~2台の機器更新作業で済む飲食店などに対し、パチンコ・パチスロ1台ごとに機器の更新作業が必要なパチンコ業界では、そのコストも非常に重荷となる。各業界団体ではかねてより、新紙幣対応による設備投資負担が重荷となり、廃業する店舗も出てくるかもしれないとの懸念が示されていた。
■ホール営業店舗数が減少、近く6,000店舗を切る懸念も
全日遊連が「組合員加盟店舗の実態調査」について昨年11月20日に集計した調査結果によると、2024年10月末時点での全日遊連加盟パチンコホールの営業店舗数は6,042店舗(前年同月比343店舗減)、新規店舗数は3店舗(同2店舗増)、廃業店舗数は21店舗(同44店舗減)、休業店舗数は103店舗(同47店舗減、当月中に休業した店舗は12店舗)となった。遊技機の設置台数も、パチンコ機が1,803,474台(前年同月比106,022台減)と大幅に減少、パチスロ機は前年同月比から16,773台増えて1,229,785台となった。
【その他】
■ぱちんこ遊技機で「デカヘソ」が人気に
昨年7月に導入された藤商事「P貞子」に続き、同8月導入のSANKYO「eF機動戦士ガンダムユニコーン 再来-白き一角獣と黒き獅子-」がファンに支持され高稼働を見せた。この2機種に共通した特徴は「ヘソサイズ2倍BIGスタート」「超デカSTART」と名付けられた「デカヘソ」が搭載されている点だ。過去にもいわゆる「回せる台」は数機種発売されてきたが、あまり市場には支持されなかった。今回ヒットした理由は「ラッキートリガー」との相性の良さが考えられる。これらのヒットにより今年は、「デカヘソ+LT」に加え、さらに進化した「デカヘソ+LT+設定+遊タイム」といった、回せる機種も登場しそうだ。ぱちんこ遊技機の大きなトレンド変化に期待したい。
昨年はスマートユニット導入や新紙幣対応など、非常に厳しい追加コストに苦しんだ一年だった。一方でガイドライン制定や、解釈基準・内規改正で未来には一定の期待感が生まれた一年でもあった。Bluetooth接続やLT・BTなど進化していくぱちんこ・パチスロの明るい未来に合わせてファン層が拡大することを切に願いたい。本年もよろしくお願い致します。
■プロフィール
鈴木 政博
≪遊技産業研究所代表取締役・遊技日本発行人≫
立命館大学産業社会学部卒業後、ホール経営企業管理部、遊技コンサル会社を経て2002年に㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の開発アドバイザー、新機種情報収集及び分析を中心に活動し、TV出演・雑誌掲載など多数。2021年7月より業界誌「遊技日本」発行人を兼務。
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