14日、政府は39県の緊急事態宣言を解除した。13の特定警戒都道府県においても、茨城県、岐阜県、愛知県、石川県、福岡県の5県が解除となり、各地域のパチンコ店は順次、営業を再開している。
一方、休業要請を受け入れずに営業をつづけてきたパチンコ店のもようが連日のように報道され、業界全体のイメージは大きく損なわれてしまった。そこで多くの遊技業協同組合(以下、組合)では、営業再開時における「ガイドライン」を組合員に示し、より一層の感染予防対策を呼びかけている。業種指定の解除にあわせ、複数の自治体で営業を再開するダイナムやマルハンなども独自の対策を公表。いずれは東京都や大阪府といった大都市圏においてもパチンコ店の営業が認められるはずだが、休業中の減収を穴埋めすべく、すぐにフル営業をはじめれば世間の厳しい視線が増すばかり。来月の営業再開を視野に入れつつ、今後はどのような対策を講じるべきか。各組合やダイナムなどの感染予防対策も参考にしながら営業再開時の取り組みについて検討したい。
より踏み込んだ混雑緩和策
ほとんどのパチンコ店では臨時休業に入る以前から店頭に消毒液を備え、感染予防対策としてきたが、定期的な換気も含めてこれらはもはや最低限の措置であり、安全性をつよく訴えられるほどの根拠とはなりにくい。何より優先されるべきは〝3密〟すべての防止であり、ソーシャルディスタンスの確保が重要だ。組合が組合員に示した「ガイドライン」にも越境してくる遊技客を入場させない対策のほか、営業再開以降しばらくは会員カードをもつ遊技客にかぎって入場させ、混雑を防ぐといった対策も打ち出した。駅前店でも会員カードの提示を求めれば越境客の入場を制限できる。
しかし、開店時間にあわせて会員客が行列をつくってしまっては意味がない。会員番号もしくは生年月日を活用し、末尾が偶数であれば偶数日にのみ入場を許可するような混雑緩和策も必要だろう。
また、組合によってはマスク未着用の入場希望者には店頭でマスクを売り、その売上を社会福祉団体などに寄附する提案を盛り込んだ。なかなかの案だとは思えるが、当面はあくまでマスク着用での来店を訴え、「社会貢献活動との抱き合わせ」といった無用な誤解だけはかわしたい。
対策の〝見える化〟
消毒液の使用は感染予防に効果的だとされながら、店頭に設置した消毒液を来店客が必ずつかってくれるとはかぎらない。来店客のすべてに検温を実施するのであれば、その段階で店のスタッフが来店客の手や服に消毒液を吹きかける。店頭でのこうした措置は感染予防対策の〝見える化〟にもつながっていくに違いない。目的はもちろん店内におけるクラスターの防止だが、テレビ報道はもとより近隣住民にも店の姿勢をしっかり印象づけるべきだろう。
さらにくわえて「ガイドライン」ではパチンコ店に遊技機の間引きを求めている。経営判断がむずかしい課題だが、厚生労働省が推奨するソーシャルディスタンスは2メートル。遊技機2台に1台の間引きではこの距離を保てない。「分煙ボードを活用すれば飛沫感染は防げる」との意見もあるにせよ、「絶対」を主張できない以上、世間はやはり見た目の印象を重視する。「分煙ボードを活用しつつ2台に1台の間引きも実施」が世間の批判を避ける妥当な対策ではあるまいか。ただ、「全席禁煙化のあとになっていまさら分煙ボードを取りつけるつもりはない」と考えるのであれば、3台のうち2台を間引き、ゆとりある店内を創出したい。すなわちこれも感染予防対策の〝見える化〟だ。
そして、店内への入場時や間引きはもとより、屋内喫煙所の運用も大きな課題になってくる。人数による利用制限か、それとも時間帯による制限か。どちらにしてもスタッフが利用状況を常に確認しておかなければならず、現実的とは言いがたい。せめて営業再開時から1、2カ月のあいだは封鎖も検討すべきではなかろうか。屋外喫煙所も同様だ。「開放された空間」でも近隣の目が気になる。愛煙家にとっては不自由ながら感染予防対策の徹底を示すよい機会だとも言える。「敷地内全面禁煙」の実施で近隣住民に安心感を与えたい。
問われる本気度
読売新聞オンラインは12日に更新したニュース記事で、今月11日より営業を再開した大分県中津市のパチンコ店を取材し、従業員が「県外ナンバー車両の入場をお断りします」と書かれた看板を設置する様子や、入店時の検温、台と台との間隔を空けるための間引き、退席後の遊技機の消毒といった感染防止対策を紹介。また、同店を訪れた遊技客の「チェックがかなり行き届いていたので驚いたが、逆に安心した」というコメントを紹介するなど、営業を再開したパチンコ店では徹底した感染防止対策が行われていることを肯定的に伝えている。
しかし、今回の騒動で被った業界のマイナスイメージは休業要請が解かれたところでそう簡単にはぬぐえない。今後も感染予防対策は怠れず、むしろ健全営業の指標のひとつになっていく。組合が示したガイドラインの遵守に努め、なおかつ店ごとでも感染防止対策を考えて競いあう。あともう一歩の努力ができるかどうか。いまこそ経営サイドの本気度が問われている。
※本稿は2020年5月13日付け「日刊遊技情報」に掲載した記事をweb用に編集したものを掲載しております。
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