【特別寄稿】パチンコ産業の歴史㉗ 2004年規制改正以降のパチンコ市場②(WEB版)/鈴木政博

2004年の規則改正により緩和が進んだパチンコだったが、その行き過ぎた射幸性から「MAX規制」がなされ、大当たり確率は400分の1までに。さらに「ベノム規制」「牙狼規制」と続き、パチンコがジャンル縮小へと向かう流れは前回書いた。

しかしこれにとどまらず、さらに新ジャンルへの内規規制対応が続く。豊丸産業製「CR天上のランプマスター」やアビリット(現コナミアミュ-ズメント)製「CRE-ZONE」などがその影響を受けた、いわゆる「時短規制」だ。こちらは2010年5月1日納品分より適用となったもので、内容は以下の通り。

日工組内規の改正・追加部分(抜粋)

3.変動時間短縮機能を備えた遊技機
本内規は、本来「おまけ」である時短機能を使い、射幸性の高い性能を有する遊技機を作らないことを目的とする。
(1)1項「条件装置の作動に係る特定の領域を有し、かつ、変動時間短縮機能を備えた遊技機」、2項「特別電動役物よりも普通電動役物で出玉を増やす遊技機」に該当する遊技機1項、2項を優先する。
(2)時短の性能
時短回数は、以下のとおりとする。
時短回数 < 1/ML -(最大記憶数+1)
・「特別図柄表示装置、遊技状態により時短回数を複数設ける場合の時短回数とは、特別図柄表示装置と遊技状態の組み合わせごとに時短回数の平均を求め、その最大の値を使用すること。
・確率変動機能作動中の時短回数は計算から除く。
(注1)時短とは普通電動役物に係る入賞口への入賞が容易になるように変動させる機能。
(注2)MLとは、作動確率の値のうち低いもの。
(3)実施日
平成22年5月1日の納品より適用する。

確変中も通常時も大きく変わらない、どちらも甘い確率設定で、おもに時短で連チャンを積み重ねるタイプを自主規制した形だ。確かに通常時確率を20~30分の1程度に甘くしてしまえば、当時の上限回数だった100回時短でも、引き戻しの繰り返しで大きく射幸性を膨らますことができる。この内規により、単純にいえば「通常確率の分母-5回」までの時短しか搭載できなくなった。例えば通常時が50分の1で保留が4個ある機種なら、時短回数は最高45回転までしか搭載できない。

さらに同2010年の夏には、MAXタイプ規制の強化策として、今まで6秒以上開放だった「大当たりに含めてもよい当たり」を「最大出玉大当たりの8分の1」とする内規を追加。

2010年8月1日納品分より適用とされた。内容は以下の通り。

日工組内規の改正・追加部分(抜粋)

1射幸性の制限
(1)条件装置が作動することとなる特別図柄の抽せん確率の下限を1/400までとすること。(抽せん確率>1/400)

(計算方法)特別図柄の抽せん確率を算出するための大当りは、役物連続作動装置の作動によって大入賞口への入賞により獲得できる最小の遊技球数が、獲得できる最大の遊技球数の1/8以上とする。
・1/8以上の遊技球の獲得ができる大当りを「出玉有りの大当り」とし、1/8未満の場合は「出玉無しの大当り」と言う。
・大入賞口の数には係わらず、獲得遊技球数を求める。ただし、上記の最小の遊技球数を獲得できない条件装置の作動終了後、特別図柄の抽せん確率が高確率となる大当りの場合は、低確率に戻るまでの間に、最小の遊技球数を獲得できる大当りまでの条件を考慮して計算する。
・出玉無しの大当りによって高確率となり、出玉無しの大当りによって低確率になる場合は、その割合を除外する。
・出玉無しの大当りによって高確率となり、大当りせずに低確率になる場合は、その割合を除外する。(回数切り、転落抽せんの抜け)
・出玉無しの大当りによって高確率となり、その状態が最も有利な入賞容易状態ではない場合は、出玉有りの大当りとなるまでの高確率の値を含める。
・出玉無しの大当りによって最も有利な入賞容易状態の高確率となり、確率変動の終了までの間に、入賞容易状態が途中で終了する場合は、その時点から出玉有りの大当りとなるまでの高確率の値と時短回数を考慮して計算する。
・リミッタ機能を有する場合は、その機能の作動により高確率状態が終了する条件を含めて、出玉有りの大当りに結びつく割合を求め、計算する。

(2)実施日
平成22年8月1日の納品より適用する。

さらに、上記規則は「8分の1」から「4分の1以上の出玉のあるもののみを出玉有り大当たりとする」に修正される。こちらは、その計算方法についても詳細が示された上で、2011年1月1日納品より適用となった。この規制では、最大出玉の大当たりが当時最大の16ラウンドの場合、「大当たり」としてカウントする当たりにするならば最低出玉は4ラウンドとなる。そのためMAXタイプだけでなく「16ラウンド搭載の甘デジ」などの開発においても影響を受けることとなった。

そしてさらに、同じく2011年1月1日納品より適用として追加されたのが、いわゆる「1.3倍内規」だ。藤商事製「CRヴァン・ヘルシング」のヒットを機に奥村遊機製「CR忍者外伝」、豊丸産業製「CR常夏蝶々」などが続々と販売、タイヨ-エレック製「CR沖縄コレクション」に至っては販売自粛に追い込まれた。当時、一大ム-ブメントと化す勢いを見せた「甘い確率」で「実際に出玉に結びつくには辛い確率」というジャンルが問題化。以下の内規が追加される。

日工組内規の改正・追加部分(抜粋)

TS乖離制限
ソフト確率(内部の本当の大当り確率)のTSを1として、実質確率のTSが1.3を超えないこと
※実質確率は4分の1内規による計算方法で算出
獲得個数制限(セ-フベ-ス)
総獲得遊技球数は9,600個以内
※総獲得遊技球数=有利な状態(主に電サポ)で獲得される遊技球数の平均値+有利な状態への突入契機となる大当りによる獲得数の最大値

上記は来年1月1日納品分から適用する。

これは「実質TS」と呼ばれる「出玉のある大当たりを得るまでに実質必要な回転数」について、「400分の1以下」だけでなく、発表している抽選値との乖離を1.3倍までにする、というものだ。99分の1以下を「遊パチ」というジャンルに制定する上で問題が起こることに加え、「出玉有り大当たり突入は399分の1だが、確変中確率は25分の1」などと「10倍アップ以上している」錯覚を誘うことが可能な点についても問題視された。またこの時に「セ-フ玉総量」が明示された点も注目すべき点だ。遊技機の画一化を防ぎ、バラエティ豊かなジャンルを育てるにあたり「出玉総量のみの規定」が最も公平かつ分かりやすい。

この規制を最後として当面の間、内規規制ラッシュは収まることとなった。そしてこの後、2004年の新規則以降においては、パチンコで初めて「緩和」といえる内規変更がなされることとなる。

(以下、次号)

■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。

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