今年はぱちんこ市場が正念場だと思っている。6.5号機から兆しが見えスマスロではっきりしたパチスロ市場の回復と成長は、機種ごとの良し悪しの差が拡大しつつあるなどの課題も多いが、あとは各メーカー、各ホールの努力次第というところくらいまでは漕ぎ着けた。問題はぱちんこだ、ということは業界関係者の多くの共通課題ではないだろうか。
そのぱちんこ、昨年後半にSAOがスマパチの兆しを見せてRe:ゼロseason2でスマパチ初の大成功機種ということになったとは思う。再販の販売方法で物議となったのは事実だが、その再販分の納品も4月21日には始まる。設置台数が増えて稼働状況がどうなるかは注目だ。
ぱちんこは昨年はかなり不作の年である。スマパチが「悪いのではない」。ほぼ間違いなく傾向として「ぱちんこ遊技機全体が悪い」のだ。P機も成功機種よりも失敗機種の方が多くなってしまったのは思い出せばわかること。12月にシン・エヴァレイがあってP機としても久しぶりに設置台数の多い成功機種登場となった。これに大海5や暴凶星を加えたとしてパチスロと比較するとどうか。沖ドキGOLDから始まりスマスロ北斗、からくり、戦国乙女、モンキーターン、そしてゴージャグなどがあって、さらには店にもよるがヴヴヴは今も現役であり、得られた収益額も大きい。ぱちんこの方が苦戦しているというのは多くのホール関係者の実感になっていると思う。
本誌先月号では広告宣伝ガイドラインについて触れた。2月29日にガイドライン第二版や質疑書などがホール4団体から発出されたからだ。3月の前半に書いた記事だからこれを取り上げた。が、もう一つ取り上げたかったテーマがあって、それがラッキートリガー(LT)だ。
3月4日から導入開始となったLT機は北斗強敵とアリアが導入初日からずっと好調を続けている。これによってぱちんこ市場に久しぶりに変化の兆しが出てきたと私は感じられるようになった。
Re:ゼロが導入された11月、レイが導入された12月については「機種が成功した」という印象だった。Re:ゼロは間違いなく成功機種だとは言えるが、Re:ゼロ後、他のスマパチ群の勢いは削がれたようにも思う。これはRe:ゼロのせいではないがスマパチ市場が「Re:ゼロとその他」になったようなものである。まだ、スマパチ市場が良い状態で確立しておらずRe:ゼロ前夜のトップ機種がSAOだけ、という状況ではこれも致し方ないのだが、つまり「市場が回復していきますよ~」というよりも「Re:ゼロどうやって(中古、再販)台数増やすか」という話になるだけだった。それがまあ再販の物議ということにつながるのだろうが、この件については本稿で詳しく触れるつもりはない。一応私見を言っておくと「再販150万円という問題と、中古市場で400万円という相場になっている問題と、いずれも法的に問題はなく、いずれも業界環境にとっては大問題」となる。
話を戻すとレイも同様だ。昨年はSEEDの想定外の失速でスマパチだけでなくP機すら厳しいかという空気を変えてくれたかどうか。レイは設置台数も多いので(5万台弱だったと思う)そう考えてもいいのだが、同時のカヲルが厳しいため店舗によっては「いってこい感」が強くてどうも空気を一変させてくれたとは言いにくい。
ところがLT機は違う。北斗強敵もアリアもその機種単体が多くの遊技客に評価され話題になっているわけだ。3月4日の週は、これはいろんなところで言ってきたが、SISの数字を見るのが楽しかった。ぱちんこの新しい内規によるカテゴリで登場初日から成功と言える稼働状況になったことは、振り返ると近年珍しい(下手したら現行規則下であったっけ?という)話になると思うからだ。
LTは昨年6月頃に業界巷間で内規内容が流布されて共有されるようになってから、とかく不遇だった。日工組はもちろん良かれと思って準備して警察庁の了承も得て内規改定をしている。しかし特にホール関係者に多かったがLT内規については評価が低かったり、少なくともさほど期待はせず、という傾向があった。
LT内規そのものへの低評価もあれば、LTと言いつつ実質は出玉性能に寄せた設計をするための方便じゃないかというような文脈批判も目立っており、出す前からかなり評価の低かったものだ。日工組としては2020年のb時短、c時短内規(と技術上の規格解釈基準改正)のときも同じような雰囲気を経験しているが、このときはコロナ禍突入直後ということで広報を大幅に削減していた。霜降り明星が販促動画出演していたりするのだが、コロナ禍突入で業界内での広告宣伝自粛ムードが多く、ホール営業者がこの年は社会からバッシングされていたこともあって、内規の問題とは考えていなかったのかもしれない。が、b時短、c時短前夜を思い出せばLT内規と同じような評価だったと思う。
結局、b時短やc時短は搭載有無も含めてメーカーが選択できるわけだが、特にc時短については既に重要な存在に性能設計的にもなっている。が、この内規解禁時に最大の成功機種が源さん韋駄天だったこともあり、特にb時短不要論はしばらく根強くなっていた。
LT内規は下馬評で同じような雰囲気だったのだ。これはぱちんこメーカー各社に聞いてみるとわかる。LT機が3月から登場するのでさすがに1月2月は買い控えするだろうと想定していたが3月のLT機も見込みよりは需要が少なかった。サミーも藤商事も工場製造能力は低くはないので事前の需要が旺盛ならもう少し販売台数も積み上げ可能だったかもしれない。要は「LTは導入開始まであまり売れなかった」のである。
こういう不遇?の扱いだったLT機が3月に登場し、一ヶ月を超えた今なお先の2機種は好調を維持している。これは「新しい内規カテゴリ対応機種が初日から好調」という「ぱちんこにおいては遡ると何年ぶりかというくらいにものすごく久しぶり」のこと。現行規則では初の経験のような気がするし、前の規則下でも2004年7月の499内規以降は日工組内規改定はほぼすべてが厳格化であるので、「性能規制が改善して成功した」ということが言えるのは果たして何年遡ればいいのか、という気もする。
そのくらいの椿事だったとすれば、市場が良い方向に変化する兆しとしてはRe:ゼロやレイ以上の可能性を感じているところだ。既に直前の仕置人はもちろん北斗もスマパチでLTで登場予定である。しかもサミーはe北斗の拳10について「シリーズ最高傑作」を謳っている。現行のLT内規はP機もe機(スマパチ)も問わないものだ。これらが大成功すれば、スマパチ市場のきちんとした確立にもつながるかもしれない。
相変わらず皮算用ばかりだが、良いシナリオの皮算用は悪くない。ぱちんこはこのまま今年、回復基調にトレンド転換してほしいと思う。
■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。
The post 【寄稿】ぱちんこ どこまで回復できるか(WEB版)/POKKA吉田 first appeared on 『遊技日本』.
Copyright © 2024 『遊技日本』 All Rights Reserved.