●ぱちんこ開発者の独り言71
前回のコラムから引き続き、今回のコラムでは遊技機メーカーとゲーム開発会社における業務提携において、考えられるメリット等について言及していきたいと思う。
①IP(インテレクチュアルプロパティ)の独占
大手ゲームメーカーは、自社IP(版権)を保持していることが一般的である。例えば、この度ユニバーサルエンターテインメントと業務提携を行ったカプコンの自社IPといえば、モンスターハンターやストリートファイター、鬼武者と、遊技機でもおなじみのIPが数多く並ぶが、ユニバーサルエンターテインメントと業務提携を行ったことで、この提携以降、カプコンが保持するIPが優先的にユニバに流れたとしても不思議な話ではない(注:どのような契約になっているかは不透明なので、確定的な話ではない)。
また、フジテレビ深夜のアニメ枠「ノイタミナ」に一時、京楽産業.が提供を行っており、その際、ノイタミナで放送されたアニメ版権は、必ず京楽産業.の意思確認を行った後、その他のメーカーに売り込みをかけていたのは一部には有名な話である。
他にも、多くの版権を保持する大手コンテンツホルダーに、遊技機メーカーは協賛金や広告出稿などを行い、関係性を構築しようとすることが少なくない。例えば、深夜アニメのCM枠に遊技機メーカーが提供を行っていると、すぐにまとめサイトなどで話題になるが、この場合、コンテンツホルダーとの関係性構築のためのCM提供であり、当該アニメの版権取得とは全く関係ない場合がある。
②開発ライン確保及び、開発費削減
遊技機メーカーと(ゲーム)開発会社が提携をすることで、ゲーム開発会社からしてみると、半永久的に遊技機開発が約束されたことにより、経営の安定化に繋がる。他方で遊技機メーカー側からすれば、継続的に開発ラインの確保を約束する代わりに、開発費のコストダウンを要求することも可能である。また、開発ノウハウの共有や、その開発会社内の優秀なスタッフ確保に動きやすい側面もある。
以上のように、ゲーム会社側は売り上げの安定化が計れ、遊技機メーカー側はトータル的に開発コスト削減が可能である。また、IP保持する開発会社に開発を依頼するメリットは他にもあり、版元確認の手間が省けること、ゲーム等で使用した素材を遊技機に流用可能なことなど多くのメリットを享受できるわけである。
一方、デメリットとしては、業務提携をすることによっての制限が多くなることが考えられる。IPと開発ラインの確保とは、裏を返せば、それを使って開発を行うしかない。とも考えられるほか、作り続けなければならない。とも言える。
現状、短中期的にはシュリンクしていくと思われる遊技業界において、業務提携を行い、多少制限が出たとしても効率化及びコスト削減を推し進めることは、トータルとしてはプラスと捉えても相違ないであろう。
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。
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